第22回理工学部、建築・環境学部教養学会主催「理系学生のための英語公開ミニ講演会」(English Lecture Meetings for Science-Major Students)
What Is Nano Technology?:
The Familiar Technology and Nano-Scale Materials
講師: 理工学部理工学科
竹村 進
理工学部、建築・環境学部教養学会では、2018年10月22日に理工学部理工学科、竹村進先生による、昨年に引き続き上記のタイトルでの2回目の英語公開講演会を開催した。昨年度の講演ではナノテクノロジーの分野における広範なトピックが扱われ2回のセッションを割いて講演が行われたが、今回はトピックを特にマクロの世界とナノの世界の違いに焦点をあてて行い、特に「シュレディンガーの猫」の思考実験について時間を割いて触れた。
「小さな世界」の発見は最近のことではなく、ギリシアの哲学者レウキッポスと弟子のデモクリトスが紀元前5世紀に「原子」の概念を発展させていたが、その後16~17世紀まで埋もれていた。
近代的な元素、原子、化合物の概念は、18世紀のアントワーヌ・ラボアジェの質量保存則やジョン・ダルトンの原子説まで待たなければならなかった。現代の原子や分子に通じる概念が、この時期にまだ不正確ながらも示された。また、16世紀後半に登場した光学顕微鏡の発達により、ミクロな世界の理解が進んだが、光学顕微鏡は現在も重要な観測装置の一つとなっている。
1ナノメートルは10億分の1メートルで、原子の大きさを1億倍すると野球のボ-ルの大きさとなり、それを1億倍すると地球の大きさとなる。ナノスケールの科学や工学は100ナノメートル以下の原子や分子の構造を制御する学問である。原子の大きさは難しい問である。原子核にはそれを取り巻く電子の雲があり、環境に応じて歪んだり、縮んだり、大きくなったりするので明確な境界がないからである。
19世紀末までの物理学では、電子、光子といった素粒子や原子のふるまいを記述することが出来なかったが、20世紀初頭から発展した量子の理論により、素粒子や原子のふるまいを実験事実と整合するように説明することが出来るようになった。1927年のソルベー国際会議において、それまでに定式化された量子論の解釈をめぐり議論が交わされた。また参加者の中から多くのノーベル賞受賞者がでたことが知られている。
Fig. 1. Classical view of atom and quantum mechanical view of views of atom
1) Sutori; Fernanda Cortes. Atom Model Timeline
2) University Science Books; “Quantum Chemistry” by Donald A. McWuarrie
マックス・ボルンは、電子や光子などの素粒子は粒子としての性質と、波動としての性質を同時に併せ持つとし、この波動性とは存在確率の波であり、粒子の存在は観測されたときに決定されるという解釈を示した。この「コペンハーゲン解釈」を巡り論争が繰り広げられ、不確定性原理を提唱したハイゼンベルクや、電子軌道論を提唱したニールス・ボーアらに支持された。一方、アインシュタイン、ド・ブロイ、シュレーディンガーらは、これに異議をとなえた。
シュレーディンガーは、確率の波という量子の理論に対する反証として、「シュレーディンガーの猫」という思考実験を提唱したが、これは逆に「コペンハーゲン解釈」を補完する結果となり、シュレーディンガーを物理学の立場から生物とは何かというテーマに向かわせるきっかけとなった(注、物理学者をやめたわけではない)。
アインシュタインは、不確定性原理について、ハイゼンベルグに宛てた手紙の中で「神はサイコロを振らない」いう言葉を残した。これは物理学の理論に確立という概念を導入し、それが妥当であるという論争に帰結に対し、量子論の曖昧さを嫌ったアインシュタインが述べた言葉であるとされる。現在もこの言葉に対する様々な解釈が試みられている。コペンハーゲン解釈についても、論争は一定の帰結にみたうえ、また様々な実験がなされ、それらの結果からも、その解釈が妥当であるとされて今日に至るが、一方で現在も議論の余地が残るものとされている。
(聴講者よりの当日の質問)
Q. I learned from my textbook that nano robots can cure our diseases. My question is how nano robots enter our bodies.
Q. Are there possible applications of nanotechnology in sports? If there are, will it contribute to the development of sports?
Q. The computers are becoming smaller and smaller. On the other hand, it seems that with the electronic component turned into nanometer level, the heat of the computer when it’s running must have a serious damaging effect on the component. My question is how we can deal with this problem.
Q. I am playing soccer, but I cannot run fast. Is it possible to run fast using nanotechnology?
Q. It is wonderful if we could produce a variety of products using nano particles by virtue of nanotechnology. However, don’t we have problems if we freely manufacture nano products without any regulations, especially the problems of toxicity or pollution?
2018年10月22日(月)実施