理工学部、建築・環境学部教養学会第38回ミニ講演会 (理科系学生のための公開英語講演会)
Lessons Learned from the 2011 Tohoku Earthquake and Tsunamis
『2011年東北地方太平洋沖地震津波から学んだ教訓』
講師:理工学部理工学科、土木・都市防災コース
福谷 陽
理工学部、建築・環境学部教養学会では、12月16日に理工学部理工学科、土木・都市防災コース所属、海岸工学の分野において津波や高潮によるリスクの評価手法を研究テーマとする福谷陽氏を講師として、標記タイトルによる2回目の英語講演会を開催した。聴講者は機械学系、土木学系の登録者数38名の1年次生およびその他の参加者であった。
講義
①津波とは
講師は津波の一般的な性質の導入において、周期、波長、振幅などから測定される津波の性質、発生の原因による津波の分類と各々の津波の発生の割合、地震以外の原因による津波の例、地震に由来する津波の発生のメカニズム、伝播における津波の高さと速度の変化などについて説明した。
②東日本大震災と津波
次に講師は東日本大震災における人的被害に言及し、16,000人の犠牲者、6,000人の負傷者、20都道府県に渡る2,500人の行方不明者があったことを警察庁の報告から引用した。釜石沿岸、宮古沿岸への津波の接近の模様を伝える動画による、現場において視覚的に確認される津波の性質;東北大学の津波モデルに基づく東日本大震災の津波の太平洋を横断する伝播の様子;震央、マグニチュード、日本各地における震度の分布、エネルギーなどからの東日本大震災における地震の性質;日本各地における津波の高さの分布などを説明した。
③津波による被害
次に、東日本大震災の津波による建物、道路、鉄道、橋、ガソリンタンク、防潮堤などへの被害;福島第一原子力発電所の事故により起こった放射性物質の拡散、土壌、食べ物、海水の汚染、漁業への影響、主に子供の甲状腺障害、避難勧告地域の設定、風評被害、計画停電の実施など、津波の主に物理的な被害や社会的影響が説明された。
④今後の津波への対策
最後に講師は津波への対策としては、ハードの対策とソフトの対策の両面の必要性を説明し、避難塔の建設や既存の建築物を利用した避難ビルなどのハードの対策の充実、土地使用の規制、地震対策基準の策定、防災教育の充実、避難システムの確立、不確実性や回帰周期を記載したハザードマップの作成などのソフト対策の実例を画像によって紹介した。
地震の発生原因の90パーセント以上が津波であり、まれな例として地滑りや隕石の落下による津波の発生がありうるが、2018年12月にインドネシアにおいて火山の爆発による大規模な津波の被害があったことが記憶に新しく(アナククラカタウ山の山体崩落に伴うスンダ海峡津波)、聴講者は津波の概念を大いに拡大することが出来た。
本講義の詳細は、2020年3月は発行の紀要「科学/人間」に譲る。
出典:BBC NEWS 2019年9月3日記事Anak Krakatau: Volcano’s tsunami trigger was ‘relatively small’(https://www.bbc.com/news/science-environment-49568107)より抜粋
当日の質疑(一部)
Q. Although the tsunami rushes to the land several times after the first wave, is there a fixed period between waves or is there no particular cycle?
津波は第一波の後も何度か陸地に押し寄せるが、波と波の間隔には一定の周期があるのか、それとも特に周期はないのか?
Q. Is it possible to weaken the power of tsunamis; for example, is it possible to reduce the amplitude of tsunamis by superimposing antiphase waves on them?
津波の威力を弱めることは可能か?例えば、津波に逆位相の波を重ねることで津波の振幅を小さく出来るか。
2019年 12月16日(月)開催