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[理工学部、建築・環境学部教養学会主催ミニ講演会] English Lecture Meetings for Science-Major Students 第77回理科系学生のための公開英語講演会 Methods for Diagnosing High Voltage Equipment 『高電圧機器の診断手法』

                  
                         
              理工学部、建築・環境学部教養学会主催ミニ講演会
               第77回理科系学生のための公開英語講演会
             English Lecture Meetings for Science-Major Students

              Methods for Diagnosing High Voltage Equipment
                    高電圧機器の診断手法

 
                           講師:財団法人電力中央研究所名誉研究アドバイザー
                                       本学工学総合研究所研究員
                                           岡本 達希 先生



理工学部、建築・環境学部教養学会では2025年6月30日(月)に、財団法人電力中央研究所名誉研究アドバイザー岡本達希先生を講師として招聘し、上記タイトルによる英語講演会を開催した。岡本講師による英語講演会は6回目となった。

岡本講師は高電圧工学の研究者であり、これまで高電圧電気機器の診断方法、およびコンピューター支援診断技術の研究に従事してきた。今講演会にて電力中央研究所での40年以上の送電事業における設備管理の経験に基づき、電力送電という仕事について、事業運営者に必要な知識と技術、社会インフラの一環としての今後の課題などについて、豊かな経験談を交えて講演を行った。電気工学を専攻する学生が在籍するクラスにて企画開催であったので、特に送電機器の劣化の仕方、劣化の予防、劣化の診断に関しては詳しい報告が行われた。

電気は他のエネルギーへの転換効率が良いので現代社会において極めて有用なエネルギー源である。エネルギーの移送効率も高く、変圧器を用いた高電圧送電などにより送電線やケーブルがあれば遠距離でも遅延なく発電所から家庭まで送電可能である。送電における重要な機器が送電ラインを繋ぐ変電所に設置されており、社会インフラとしてのそれらの機器の管理は極めて重要な仕事である。

岡本講師は通例地下に建設される都市部の変電所と地上に設置されることが多い地方の変電所の設置状況の違いを説明し、套管(ブッシング)、ガス開閉装置、変圧器、架橋ポリエチレンケーブルなどの変電所の主な機器の機能などを紹介した。変電所の機器の劣化診断の難しさの要因としては、その耐用年数が30~40年と非常に長いこと、機器により異なった材料が素材として用いられていること、機器の耐用年数が設置環境や自然環境により変化すること、機器により劣化の仕方が累積的である場合と非累積的である場合があること、様々な異なる要因が介在することなどにより劣化の仕方が変化することなどが挙げられた。

国内で用いられている変圧器の数は、高度経済成長、オイルショック、人口減少などの社会的な変化に呼応して増減しているが、耐用年数が長いので劣化の調査も長期にわたって継続されなければならない。変圧器内の部位により劣化の性質も異なるが、劣化の影響も様々であり熱による劣化がねじの緩みに繋がる場合、素材の収縮に繋がる場合、機械的な力の低下に繋がる場合などに分けられ、それぞれ場合の対応も異なる。変圧器の絶縁のために使用されている多くの絶縁紙も劣化診断の対象であるが、重合度の程度は温度の記録から推定される。あるいは、故障により変圧器内を大きな電流が流れるとコイルの変形が起きることがあるので、周波数反応分析による正常なコイルとの比較により異常なコイル状況を見つける手法も開発されている。


 都市部における電力ケーブルの布設においては、各種の手法が活用されている。特に都市部ではケーブルを布設するために地下トンネルを作成する場合もある。あるいは電力ケーブルを丈夫な管路内に布設する方法なども用いられる。いずれにしろ、都市部の電力ケーブルの布設には多くの時間と予算が必要となる。


都市部のXLPEケーブルは、前述した様にトンネル内の設置、あるいはパイプ中に収納されて送電されるので、我々が日常において目にすることはなく、その管理は比較的容易であり経年劣化による事故はあまり生じない。然し、40年を超える頃から絶縁性寿命の限界に近づくので、長いケーブルのどの部分に劣化があるかを見極める試験も行われる。例えば、長さ100メートル程度の撤去された電力ケーブルの中で生じた0.5mm程度の水トリー劣化を、特殊な絶縁破壊試験により検出する作業が行われる。


ガス開閉装置ではPDセンサーにより内部の偶発的な欠陥や汚染などが検知され、構造全体の絶縁は絶縁効率の高いSF6ガスが用いられ、その結果装置全体が小型化され地中に埋め込み可能となっている。変圧器のブッシングからはガス漏れが起こることがある。また、ガスの圧力が下がると落雷や電力系統の切り替えで発生するサージ電圧で故障が起こることがあり危険である。更に、長い年月の間に雨水がブッシング内部に浸透してしまい故障に繋がることがある。従って各種化合物をブッシング設置部のセメントの外側に塗って隙間を塞ぐ処置が施される。

岡本講師は、電力送電機器の管理と劣化の検出のためには様々な材料が様々な方法で用いられてきたが、万全の信頼性を持つ方法というものは依然として確立されていないことを説明した。さらに今後も、より高い信頼性をもつ診断方法を追及しなければならないことを強調し、理系の受講者のこの課題への関心を大いに高めた。

講演後に聴講者からは多くの質問が行われたが時間的に収まりきらず、一部は事後にLMSにて対応した。下記は当日の質疑の一部である。



                                         2025年6月30日開催

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