理工学部電気・電子コースの中野幸夫教授が電力中央研究所と共同で提出した論文が、一般社団法人電気学会において高い評価を受け、第72回電気学術振興賞 論文賞を受賞しました。この賞は、電気学会論文誌および共通英文論文誌に発表された優秀な論文に贈られます。5月27日(金)には、東京都千代田区の都市センターホテルで表彰式が執り行われました。
「電気の使い方から独居高齢者を見守るシステム その1:世帯の総負荷電流から居住者による電気機器の直接操作の有無を推定する方法」と題した論文では、住宅の給電線入口で測定される、住宅の総負荷電流の波形パターンなどから、その住宅の居住者による電気機器の操作状況を推定する方法を提案。また、この方法の見守りシステムへの適応可能性を検証するため、実際に11名の独居高齢者を対象に1年間の見守り実験を実施し、その有効性を実証しました。
近年では一人暮らしの高齢者による孤独死が社会問題となっています。今回開発された見守りシステムでは、独居高齢者が自宅で電気機器を使用しているかどうか、操作状況を確認することで、高齢者の生活状況を推定することができます。電気機器の操作状況は、計測器に埋め込まれたPHSを経由して管理者側のパソコンへ送信されます。そのため、居住者は計測器を操作することも、また特定の電気機器を使用しなければならないということもなく、普段どおりの生活を送るだけで、自動的に見守られることになります。
この見守りシステムをすべての独居高齢者の住宅に設置することができると、多くの世帯の中から注意を傾けるべき世帯を瞬時にスクリーニングすることが可能となり、限られた要員で多くの世帯を効率的に見守ることができるため、むやみに心配することなく非常事態に早急に対応することができます。同論文で提案されたこの技術は、すでに実用化され一部の家庭で使用されています。さらに、2020年代までに全国での設置が進められているデジタル式次世代型電力量計のスマートメータへ今回の技術を導入することも中野教授らによって提唱されています。
賞の受賞を受けて中野教授は「これまで取り組んできた研究が評価されたことを率直にうれしく感じています。今後はスマートメータを活用した見守りシステムの導入にむけて研究・開発を進めていきたいと考えています。導入が実現し見守りシステムの情報を自治体などで管理することができれば、より独居高齢者が安心して生活できる社会が実現するのでは」と語りました。