理工学部、建築・環境学部教養学会主催ミニ講演会
(第48回理科系学生のための公開英語講演会)
Exploring the Dynamic High-Energy Universe
激動の高エネルギー宇宙への旅
講師:理工学部 数理・物理コース
中嶋 大
理工学部、建築・環境学部教養学会では2022年6月23日(木)、本学理工学部 数理・物理コースの中嶋 大氏を講師として、「第48回理科系学生のための公開英語講演会」を実施した。
2019年度以来同タイトルにての3回目の講演会であった。
天体物理学は天体の性質を確定するために、物理学や化学の原理が利用される天文学の部門であるが、講師の専門分野は「高エネルギー天文物理学」であり、特に可視光の世界では観察できない天体のX線を天体観察の道具として用いた観測が講師の研究テーマである。
X線を用いて天体を観測する理由を説明するにあたり、可視光を含む電磁波の波長の違い、X線を用いて観察される宇宙の映像、X線を天体観測に用いる場合に天文衛星を大気圏外に置かなければならない理由、ブラックホールという天体について、天体がブラックホールになるための条件などが導入において説明された。
次に講師は天文学における最近の大きな出来事を紹介した。人類は初めて2019年にブラックホールの撮影に成功した。
地球から5500万光年離れたM87銀河のブラックホールを世界中の天文台の望遠鏡を結合して地球サイズの仮想望遠鏡、イベント・ホライズン・テレスコープを(事象の地平面望遠鏡)を作ることによって達成されたものである。
また本年2022年には天の川銀河の中央にある地球から約2万7千光年の距離にあるブラックホールSagittarius A*(射手座A*)の映像が撮影された。
最後にX線による天体観測機器の開発については、2016年2月17日に日本の代表的なロケットHII-Aロケットにより打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」、本年度末打ち上げ予定のX線観測衛星XRISM(クリズム)に搭載のX線望遠鏡、X線CCD cameraの材質や構造などについての紹介が行われた。
後日提出された受講者からのレポートでは、多くの理工学部、建築・環境学部の学生が天文学あるいは天体への理科系的な関心を持つことをうかがい知ることが出来た。
中嶋講師の講演により、理科系受講者の天体への興味が大いに刺激されるとともに、1年次生を主とする受講者の英語学習の動機づけへの大きな力添えをいただいた。
下記は当日の質疑のうちの一部である。
《Questions & Answers》
Q. If a supernova is born, what is the distance needed for the earth to remain safe? Also, what are the specific effects to be produced by the explosion of a supernova?
超新星が誕生する際に地球に影響を及ぼす距離、また、具体的な影響を教えてください。
A. It is said that if a near-Earth supernova explosion occurs within the distance of 30 light years, it will affect Earth’s environment to some extent. Intense gamma-rays make nitrogen oxides via photochemical reaction with nitrogen molecules in the atmosphere. That process will destroy ozone layer, which leads to significant increase of UV light reaching the Earth’s surface. Recent research revealed that some ice layer in Antarctica includes rich nitrate. It is suggested that the nitrate was produced within the atmosphere by nitrogen oxides, which in turn should have been created by the gamma radiation from a supernova. However, you don’t have to get worried about the effect of supernova explosions; the frequency of occurrence for such a near-earth supernova explosion is considered to be once per billion years!