第26回理工学部、建築・環境学部教養学会ミニ講演会(理科系学生のための英語講演会)
Why Do We Study Plants?
なぜ植物を学ぶのか?
講師:理工学部理工学科、生命科学コース
近藤 陽一
理工学部、建築・環境学部教養学会では、12月10日に理工学部理工学科、生命科学コース、近藤陽一氏を講師として、標記タイトルによる英語講演会を開催した。講師の専門である植物生理学の立場から、植物を研究することによってどのような社会への貢献が可能であるのか、またなぜ植物を研究しなければならないのかという点について英語のレクチャーが行われた。当日の講義概要は以下の通り。
植物は私たちが吸い込む殆どの酸素をつくっているので人間は植物がいなければ生きてゆけない。また、植物は人にとってのほとんどの食べ物と燃料を作りだしているので、この理由からも植物なしでは人は生きられない。
植物の栽培方法をより迅速で持続可能な方法で変えないと、人間は十分な食料を確保できない。現在の予測では、2050年までに世界の人口は90億人となり、食料の生産量は70パーセントの増加が必要とされる。
植物科学者は、干ばつやその他の環境ストレスに対して耐性のある植物や栄養価のより高い植物をつくりだすことにより、世界的な飢餓の軽減に貢献することを目指している。
干ばつはすでに地球の食糧事情における大きな問題となっているが、更に地球温暖化は植物への干ばつのストレスを強化すると考えられ、2050年度までの予測では、摂氏度が一度上昇する毎に、3~5パーセントの作物の産出量の減少が起こるとされる。5度の上昇では15~25パーセントの産出量の減少となる。植物科学者は干ばつに対する耐性をもった植物をつくる努力をしている。
(from Williams, M.E. (February 25, 2011). Why Study Plants? Teaching Tools in Plant Biology: Lecture Notes. The Plant Cell (online), doi/10.1105/tpc.109.tt1009)
飢餓に悩まされるアフリカの地域ではビタミンAの欠乏が顕著であるが、このような状況は植物の栄養価の向上により改善されうる。植物科学者がビタミンAを多く含むキャッサバの品種を発見したことは、このような貢献の一例だ。
植物は食料以外にも、薬や医薬品、木材や繊維、石油をもとにしたプラスチックのような製品にかわるバイオ再生可能代替品、そして再生可能エネルギーなどを提供する。
もし植物からエネルギーが取れるならばそれは化石燃料にとって代わることが出来る。もし米や小麦のような食料となる植物を燃料の原料として使うと、これらの価格が高騰してしまうので、食用ではないススキの仲間のような成長が早い多年生の植物がバイオ・エネルギーの原料として好ましい。
植物を研究することは私たちが食べ物を維持し、健康を保ち、住まいを確保し、衣類を身に着け、幸福であることを可能にする。
当日の聴講者よりの質問
Q. Why do animals stop growing when they become adults in contrast with plants, which continue to grow taller and wider throughout their lives?
植物は大人になっても成長し続けるのに、なぜ動物は大人になると成長をやめるのか。
Q. Do plants also grow old in the same way as humans do?
植物も人間のように老いますか?
Q. What do you think would have happened to the earth if there were no green plants or other organisms that convert light energy into chemical energy? Also, what do you think would have happened to humans in that case?
もし、光エネルギーを化学エネルギーに変換する緑の植物や他の有機物がいなかったらば何が起きたと思いますか。また、その場合には人間には何が起きたと思いますか。
2018年12月10日(月)開催