第２６回理工学部、建築・環境学部教養学会ミニ講演会（理科系学生のための英語講演会）
Lessons Learned from the 2011 Tohoku Earthquake and Tsunami
2011年東北地方太平洋沖地震津波から学んだ教訓
講師：理工学部理工学科、土木・都市防災コース
福谷 陽
理工学部、建築・環境学部教養学会では、１２月１７日に理工学部理工学科、土木・都市防災コース、福谷陽氏を講師として、標記タイトルによる英語講演会を開催した。講師の専門は海岸工学coastal engineeringであり、特に津波や高潮によるリスクの評価手法を研究テーマとしている。
津波の語は津（港）の波に由来しているが、実際には地震により沿岸に押し寄せる大波ばかりではなく山や氷河の崩壊、がけ崩れ、火山の爆発などで生じる地球物理学的現象を指す。津波は周期periodと波長wavelengthをもち、海上での波長は１００メートルから１００キロメートルに及ぶ。過去２００年に起きた津波の９０パーセント以上が地震に起因するものである。海洋の下層のプレートによる圧力から、上層のプレートが沈み地震のエネルギーが蓄えられ、上層のプレートが跳ね上がる際にエネルギーが水に解き放たれて、突然の大量の水の移動が起こるのが津波であり、形成された津波は引力により維持される。また、津波は水深の深い沖合では、波高は低いがジェット機並みの速度で進む。一方、陸上では、波高が高くなり車両やマラソン選手並みの速度で進む。
出典：気象庁ホームページ
東日本大震災における人的被害は甚大で警察庁の最新の報告では１万６千人余りの人々が死亡し、約６千人が負傷し、２千５百人以上が行方不明となっている。沿岸の都市では多くの構造物への被害が生じた。宮城県南三陸町の歌津地区では橋の橋脚が流された。福島第一原子力発電所では水素爆発、レベル７のメルトダウンが起こり、政府は避難ゾーンを設け発電所半径２０キロ以内の住民が避難した。電力発電量も減ったので関東地方においては計画停電も実施された。福島第一原子力発電所の事故は放射瀬物質の拡散を招き多く住民、特に児童への人的被害が起きた。また、土壌、海水、食べ物、水の汚染に加えて風評被害が被災地域住民を苦しめた。
岩手県田老町の「万里の長城」と呼ばれる防潮堤は倒壊した。津波への対策である防潮堤の有効性には検証の余地がある。津波への対策としては堤防のようなハードの対策ばかりではなく、ハザードマップ、災害予防教育、避難訓練、避難システム、土地利用規制、保険などのソフトの対策も重要である。特に津波ハザードマップに、不確定要素を書きこむことなどが重要である。
当日の聴講者よりの質問（一部）
Q. What is the method adopted to make a forecast of the height of tsunamis?
津波の高さを事前に予測する方法はどのようなものですか？
Q. Is it possible to accurately predict the occurrences of earthquakes?
地震は正確に予測することが可能ですか？
Q. It is said that the Nankai Trough Earthquake could happen at any time. Why can’t we predict exactly when it will occur?
南海トラフ地震はいつきてもおかしくないと言われていますが、そのいつがはっきりとしないのはなぜですか？
Q. What are the advantages and the disadvantages of building breakwaters, and do we have other ways to stop tsunamis than building breakwaters?
防波堤を設置する利点と欠点は何ですか？そして防波堤を除いて、津波を止めるために他にどのような方法がありますか？
Q. For protecting coastal areas from tsunamis, is it not good enough simply to keep the breakwaters high and strong?
津波を防ぐためには防波堤を高くして、強固にするだけではダメですか？
２０１８年１２月１７日（月）開催
