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ミニ講演会「ろうそくの炎から考える化学」-共通科目-

イベント

 

理工学部/建築・環境学部教養学会では、2016年10月17日に理科系学生のための英語講演会「ろうそくの炎から考える化学」(講師:理工学部生命科学コース 飯田博一先生)を開催しました。

本講演会においては、飯田先生のご専門である生命科学の分野から理系の学生にとって興味深いテーマのご提供をお願いしましたが、工学系の学部、コースの垣根を越えた学生に対して行われ、専門外の聴講者の素朴な質問にもお答えいただきました。

以下、当日の講演の概要を紹介します。

飯田先生による上記表題での英語講演会は、2014年5月30日、2015年10月22日に続き今回で3回目となり、ろうそくの炎の燃焼をテーマとするご講演を理工学部、建築・環境学部の学年、学系の垣根を越えた学生を聴講者としてF-601教室にて行われた。冒頭、英国王立研究所のクリスマス講演で「市民の講演者」として青少年のために「ろうそくの科学」の講演(The Chemical History of a Candle:1861年Royal Institution におけるクリスマス講演の記録)を行った科学者マイケル・ファラデーとその研究、著書を紹介された。

今回は以下の内容に沿って、多くの画像を用いて進められた。1)ろうそくの構造、2)炎の構造、3)炎の影とその特徴、4)ろうそくの頭部に窪みが形成される過程、5)ロウは燃焼するのかという問い、6)燃焼に至る過程、7)燃焼に必要な要素、8)空気の成分、9)燃焼のしくみ、10)毛細管現象、11)空気と可燃性の気体の間の化学反応、12)気体の生成と燃焼、13)炎色反応、14)元素周期表、15)Rutherford-Bohr モデル、16)炎色反応の応用、17)虹の色、18)原子吸光

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ろうそくは遠い昔より、光を取るばかりでなく熱を得るため、あるいは時間を知るためなどの用途にも用いられてきた。ろうそくは炭素、水素、酸素からなるロウの部分と芯の部分とからなる。ろうそくの芯に火をともしたときに「ろうそくが燃える」という事象が起こるが、飯田先生は「ろうそくが燃える」という時に燃えているものとは何なのかと問われた。また、ろうそくが燃えた後には美しい窪み(cup)がろうそくの頭の部分に出来上がるのはなぜであろうかと問われた。

空気が燃えているろうそくに近づくと、ろうそくの熱が作り出す気流の力で上昇する。そしてそれは、ろうそくの外壁の温度をその内部よりも下げる。ろうそくの内部は芯を伝わって降りてくる炎により溶けるが、ろうそくの外壁は溶けない。これにより美しい窪みが、ろうそくの頭に出来上がる。
  
では、何が燃えているのであろうか。先生はロウ自体は炎にあてても燃えないこと、一方、「燃えている」ろうそくの頭の窪みには溶けたロウが液体として存在することを映像によって示された。

ファラデーは固体のロウ自体は燃えないが、溶けたロウは可燃性の気体に変化すると指摘した。炎を作るために必要なものは可燃性の気体と空気のなかの酸素の両方である。毛細管現象により、重力に反して溶けたロウの液体が芯に引き上げられる。燃料と酸素は化学反応を起こし、光が生ずると同時に燃料は消費される。

飯田先生はまた、炎の色の様々なバリエーションについて触れられ、炎の色はその温度によって異なり、異なった化学物質を加えると異なった色になること(flame test、炎色反応)をご説明された。

飯田博一先生のご講演は、マイケル・ファラデーの講演が青少年を魅了したように、多くの学生聴講者の興味を喚起した。(注1) 講演後のQ&Aセッションでは、学系の垣根を越えた聴講者より昨年までとは異なった多くの質問がなされ、先生は多くの時間を割かれお答えになった。(注2) 質問にお答えになる中で、学生時代におけるご専門との出会いなどにも触れられ、学生の興味を更に喚起された。

脚注
1. マイケル・ファラデー著、「ロウソクの科学」(岩波文庫、21頁)より引用。「この王立研究所にわざわざ来てくださったお返しに、私は皆さんに、この連続講演のテーマとして、「ロウソクの科学」を選びました。私は前の機会にもロウソクを取り上げましたが、もし私の好きなようにテーマを選べるなら、ほとんど毎年くりかえしてこのテーマを取り上げたいと思うほどです。このテーマには、面白い点がたくさんありますし、これが示してくれる科学のさまざまな分野への多様な道筋がすばらしいからです。宇宙のすべてを支配する諸法則の中で、ロウソクが燃える現象に何らかの役割を果たしていないもの、また、何らかの関係を持っていないものはありません。」

2.昨年度においては主にろうそくの炎の燃焼に関して、1)異なった色の炎ができる条件、2)ろうそくの炎に光を当てた場合に出来る影の特異な性質とその要因、3)炎の燃焼を長引かせることのできる要因(芯の長さ、ロウの材質など)、4)炎色反応を水質の検査に利用する応用例、5)炎から上がる水蒸気の観察方法などの事柄についての質問がなされた。

当日の聴講者よりの質問は以下の通り。

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Q: My text says that people historically used candles for keeping time.
I wonder how people used them for that purpose.

Q: Professor Iida, why did you become interested in the flame of a candle?

Q: Why doesn’t the wick burn out quickly?

Q: What is the difference between the candle and the aroma candle?

Q: My textbook says that flame gives heat. My question is why the fire has heat.
Q: I understood the mechanism of burning of a candle. Could you tell us about the origin of candles?



Q: I understood that the colors of flame differ depending on the substances in the wax.  I’m interested in the length of time spent for the wax to melt.  Does it also differ depending on its chemical substances?

Q: What is the state of flame? Is it a gas or a solid?

Q: Why is the temperature of a flame different in different parts of it?

Q:Why did Michael Faraday choose “the Chemical History of a Candle” as the topic for the Christmas Lectures?

Q:How does the flame of a candle disappear when the candle stops burning?

Q: Why is the flame of a candle blown out by the wind?

Q: Why does the flame show various colors under the flame test?

Q: In the process of burning of a candle, which occurs first, chemical change or physical change?

Q:What is “capillary action”?

Q: Why is the flame of a candle red?

Q:Why doesn’t a flame burn in the water?

Q: What’s the difference of temperature among blue part, red part and yellow part of a candle flame?
Q: How long have you been practicing research on the wax of a candle?

Q: I heard that the flame of a candle becomes round if you burn a candle in space.  Would you explain the reason?

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