キャンパスライフ

ミニ講演会「キャピラリーポンプ」-共通科目-

イベント

 

理工学部、建築・環境学部教養学会ミニ講演会
理科系学生のための英語講演会
Capillary Pump: Expertise for Heat Transfer
『キャピラリーポンプ』

講師: 理工学部理工学科、総合機械コース 辻森 淳 先生


4百年以上前にガリレオが望遠鏡を用いて観察した宇宙への憧憬は、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』に描かれ、著者が他界した1933年の翌年に産まれたガガーリンにより人類史初の宇宙への旅が実現され、ニール・アームストロングが月に着陸してから50年以上が過ぎた今、Cry for the Moon!と思われた宇宙への旅立ちが可能になったばかりでなく、地球の外で暮らすことも不可能ではなくなった。 今日においては多くの人工衛星が打ち上げられ、地球上の軌道を回りながら地球の観察を行い多くの情報を日々、我々に送ってくれている。然し、科学の現場では多くの現実の課題を同時に解決する努力をしながらそのような営みが行われている。人工衛星の例では、情報処理量の増大に伴いコンピュータ処理装置の熱流量が増加する一方、機器の小型化に伴い、冷却装置を熱源に隣接する形で搭載することが難しくなっている。機械は持った熱を冷却しないとこわれてしまうが、多くのエネルギーを消費することが望ましくない人工衛星の環境においてコンピュータ処理装置の冷却はどのように行われているのだろうか。

理工学部理工学科、総合機械コース教授の辻森淳教授はこの分野において熱移動の装置の研究に携わる研究者である。5月28日に先生をお迎えし、上記のタイトルにおいて昨年に引き続き2回目の英語講演会を開催した。講師自身が開発に携わる、技術試験衛星VIII型きく8号に搭載された毛細管作用を利用した熱輸送装置であるキャピラリーポンプループの紹介をテーマとした講演である。聴講者よりは予め多くの質問が寄せられていたため、十分な質問への回答時間を確保するため、第一部を英語Q&Aセクションとし、第二部英語レクチャーへ進んだ。以下は聴講者よりの質問の一部である。学系を越え土木工学を専門とする聴講者などからも技術の応用の可能性などに関して興味深い質問が寄せられたことが印象的であった。

Q. Does Loop Heat Pipe have defects? If so, what are they?
ループヒートパイプの欠点があるとしたらそれは何ですか。
Q. I read that heat pipes are being used for a geothermal snow melting equipment. I would like to ask how efficient they are for this application.
ヒートパイプを用いて地熱の融雪への利用があるとあったのですがどれくらいの効果が見込めるのですか?
Q. My question is about the heat pipe. If it has the same capillary structure as that of a fountain pen, can we use ink for the heat pipe too?
ヒートパイプについての質問です。ヒートパイプが万年筆と同じ毛細管構造を持つならば液体をインクにしてもできるのではないでしょうか?
Q. I have heard that in outer space things become extremely heated when they catch the sunshine. My question is “Can the device utilizing capillary action cool the machinery of a satellite well enough?”
宇宙空間で日光が当たると、とても高い温度になると聞いたことがあります。毛管作用を利用するヒートパイプを用いたシステムで人工衛星の機器の冷却は十分にできるのでしょうか。
Q. Does the effect of capillary action differ depending on the kind of liquid used for the heat transfer device? If it does, what is the cause of the difference?
毛細管現象は液体の種類によって変わるのか?また、変わるとしたらなにが関係するのか?
Q. How is it possible for the heat pipe to withstand the pressure when the liquid evaporates?
なぜヒートパイプは液体が蒸発するときの圧力に耐えられるのか?

JAXAにより新たに開発された技術試験衛星きく8号は莫大な量のデータを送信しており、熱荷重1200ワットを15メートル移送できる冷却装置が、搭載された電子機器を冷やすために必要である。機械的なポンプを用いない毛管現象を利用した冷却装置である熱移送ループであるヒートパイプは、すでに一般的にラップトップ・コンピューターに用いられ商品化されているが、ヒートパイプの能力を更に強化したキャピラリーポンプループが開発され、過酷な環境である宇宙における高い信頼性と熱制御能力を持つ装置としてきく8号において用いられている。
講師は多孔性のウィックが埋め込まれた蒸発装置、凝縮装置とそれらの間を接続し、液体と蒸気を送る液体送管、蒸気送管からなるキャピラリーポンプループが、機械的なポンプを要せずに熱流量の多い領域から外気へ熱を逃がす仕組みを詳細に説明された。


第三部として日本語でのセッションが設けられ、講演内容の補足として、1)技術試験衛星きく8号では携帯電話などの移動端末などのための電波の宇宙における中継地点としての可能性を試験していること、2)もともとキャピラリーポンプループには樹脂製の多孔質剤を用いていたが、打ち上げの衝撃などに耐えられる金属ウィックが膨大な金額をかけて開発されたこと、3)1966年にキャピラリーポンプループは開発されたが、莫大な予算を要して開発されたのであることと、引力のある環境では毛管力という小さな力が効果を発揮しにくいという事情から、現在でも地上の製品には利用されていない状況であり、大きなコストをかけて設置してもそれに見合った付加価値をもたらす応用の可能性を探すことが地上での利用の課題であることなどが説明された。

(2018年5月28日開催)

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