教育・研究環境

応用化学コース

研究紹介


ki1

New
スマートフォンなどの電子デバイスの小型化・多機能化を支えるめっき技術

小岩 一郎 研究室

 
a1

安全・安心な水素社会実現に向けて~材料の色の変化で水素の漏れを室温検知~

濵上 寿一 研究室

 




■ スマートフォンなどの電子デバイスの小型化・多機能化を支えるめっき技術

小岩 一郎 研究室

 
 皆さんの多くは、スマートフォンやパーソナルコンピューターを使用していると思います。それらの電子デバイスは、マザーボードと呼ばれるプリント配線板の上に集積回路(IC)や電子部品を載せています。特に、スマートフォンのように限られた面積に多くの部品を載せるためには、プリント配線板の表面には微細で高密度な配線をする必要があります。そのためには、部品搭載面は、絶縁体と導通体(銅)を交互に積層するビルトアップ工法が使用されています。その際に各層を電気的につなぐためにビア・フォール・フィリングという銅めっきでの穴埋めを行います。

ki1
図1. ビアフォールフィリングの概念図

 図1には、ビア・フォール・フィリングの概念図を示します。目的は穴(ビア)を埋める(フィリング)ことですので、穴の内部では銅めっきが進行して、穴の内部以外はめっきの析出を抑制する必要があります。そこで、めっき液に、抑制剤、促進剤、平滑剤を添加し、抑制剤が吸着することで穴の内部以外のめっき膜の析出を抑制し、穴の内部に促進剤が作用して穴を埋めます。そして、平滑剤がめっき膜の表面を平滑にします。実に、化学的は方法だと思いませんか?めっき液に微量の添加剤を三種類入れるだけで、穴の内部のみを銅で充填できるなんてすごいと思いませんか?皆さんが使っているスマートフォンには、この技術が使われています。
 

ki2
図2. 深さの異なるビアフォールと上部配線を一括でめっきで形成した走査型電子顕微鏡(SEM)写真

 図2には、この技術を利用して、50μmと100μmの穴埋めと表面の配線を一括で形成した基板の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示します。100μmの穴には配線も含めて120μmの銅めっきが行われ、50μmの穴には70μm、そして、配線は20μmの銅めっきのみ形成されています。部分部分で、異なる厚さのめっき膜を形成していることになります。それを、微量な三種類の添加剤を加えるだけで制御しています。もちろん、めっき浴の撹拌や電流密度の制御は必要になりますが、添加剤を適切に選択することで、このようなことが可能になっています。このような技術が電子デバイスを発展させてきています。化学の重要性が高まっています。

 関東学院大学は、プラスチックの上のめっきを世界で最初に実用化した歴史を持っています。現在でも自動車のエンブレムやラジエターグリルは、プラスチックの上にめっき膜を形成しています。その他の部分もプラスチックのめっきが使われ、自動車の軽量化に役立っています。自動車に乗るときに、金属色しているものを軽く叩いてみてください。金属だとおもっていたものが、実はプラスチックにめっきをしてものの可能性があります。
 


 


■ 安全・安心な水素社会実現に向けて
~材料の色の変化で水素の漏れを室温検知~

濵上 寿一 研究室

 
 日本の持続的な経済および社会の発展を目指し、2014年4月のエネルギー基本計画に「水素」が組み込まれました。化石燃料資源の枯渇問題および二酸化炭素排出に伴う地球温暖化問題を解決するため、次世代の究極なクリーンエネルギー源として水素は注目されています。最近、水素を燃料に用いた燃料電池車(FCV)が世界に先駆けて日本国内で販売が開始されました。今後の日本社会では、水素の製造、貯蔵、輸送、利活用(燃料電池や水素発電)など水素に関連した科学技術の大きな進展が期待されます。

 一方、水素は2011年3月に福島第1原子力発電所で発生した水素爆発事故が強烈な印象として日本国民の脳裏に焼き付いていることと思います。そのため、安全・安心な水素社会の実現が強く望まれるところです。水素の安全性と信頼性を確保する一つの手段として、水素の漏れを迅速かつ安全に検知するための水素センサの研究開発が挙げられます。これまでに実用化されている水素センサは、水素の漏れをセンサ材料の電気的特性(電気抵抗など)の変化として捕らえることを原理としている半導体方式(作動温度は250C以上)が主流となっています。それに対し、水素の漏れをセンサ材料の光学的特性(透過光強度または反射光強度)の変化として捕らえることを原理とするオプティカル水素センサに関する研究を我々は行っています。適切な触媒金属を用いることで、室温においても水素の漏れを検出することができます。

a1
図1. 環境にやさしいプロセスを用いた触媒金属ナノ粒子担持チタニア薄膜の作製法の概略

a2
図2. 環境にやさしいプロセスを用いて作製したパラジウム金属担持チタニア薄膜の水素検知特性
測定条件:室温、波長=640 nm(赤色レーザダイオードの波長に相当)、純水素

 我々の研究室では、地球環境にやさしいプロセス(図1)を用いて低コストな革新的オプティカル水素センサ(図2)を研究開発することで、安全・安心な水素社会の実現に貢献するとともに、地球温暖化の抑止に資することを目的とし、学生とともに日々研究を進めています。

PAGE TOP
〒236-8501 横浜市金沢区六浦東1-50-1
Copyright(c) Kanto Gakuin University All rights reserved.