ロボットにはさまざまな作業が期待されていますが、人と同じように多くの作業を1台でこなすことのできる汎用ロボットは実現が難しく、また実現しても高価なものになって、広く導入されにくいと考えられます。そこで、1つの機能に特化した、安価な専用ロボットを、作業を限定して導入したり、あるいは複数台使って協調システムを構築して、多くの作業に対処したりすることが、主に力作業の分野で広くおこなわれています。
一方、今後広く利用が期待されるコミュニケーション機能を持ったサービスロボットが対象とする対人サービス作業においても、状況は同じです。そこで、本研究では、力作業での協調作業の考え方を対人情報サービス作業にも適用することをおこなっています。ここで取り上げる作業の内容は、会話をする、情報を提供する、パフォーマンスをするなど、サービスの中でも力作業以外のものです。そして、1台のロボットがすべておこなうのではなく、それぞれの作業が得意な、いわば専用のサービスロボットを複数台用意し、わたしたちがグループ作業でよく使っている「役割分担」という知識をロボットに応用することで、提供できるサービスの幅を広げ、効果を向上させることを目標としています。
■ 日本発・ディジタルものづくり規格(DTPD)による設計の効率化検証
金田 徹 研究室
DTPD(Digital Technical Product Documentation)という新しい日本工業規格ができつつあります。これは、3D-CADによる製品のディジタルデータを、設計・開発・製造のプロセスではもちろんのこと、製品企画から顧客へのアフターサービスの全プロセスで活用させようという趣旨のもとで規格化が進められていいます。本研究では、この規格原案作成に協力しているJEITA(電子情報技術産業協会)が主催し、(公社)日本設計工学会が後援する実証プロジェクトに参加し、3Dモデルを活用したものづくりの効率化の検証をおこなうことにしました。
JEITAから与えられた課題は、小型プリンタの樹脂製外装部の設計モデルを、GPS(製品の幾何特性仕様)の考え方を取り入れて構築することでした。3D-CADであるSolidWorksを使用して、2つの設計案を検討しました。その後、問題点の解消をした上で、この樹脂製品を製作するための金型要件も満足させた最終設計案を決定しました。その外観を図1に示します。
図1 最終設計案(外観のイメージ)
図2 図示された3DAモデル(左と右:外装部の上部品と下部品)
最終設計案として作成した3Dモデルを3DAモデル(寸法以外に製品・部品に必要な情報を含んだモデル)に仕上げられた状態の一例を図2に示します。
3DAモデルによるものづくりの効率と従来通りの2D図面によるものづくりの効率を比較する必要があります。2D図面には、数多くの寸法の指示や寸法公差、幾何公差、表面性状などを付け加えなければなりません。しかし、3DAモデルにも、そもそも寸法情報は、ディジタルモデル自身に含まれていることが、図示状での大きな違いとなります。
その結果、DTPD規格を適用した3DAモデルによる設計と2D図面による設計では、その工数はほぼ1/2以下になることが実証できました。
この実証プロジェクトには、8大学、2高専の合計10チームが参加しましたが、本学チームは準優勝の結果を残すことができました。